中国とIT今昔
90年代に中国人が留学生として来日して、そのまま日本企業に就職する人と会社内でいろいろ話をする機会があった。
彼が言うには
「政治家に言動を抑制されるのが嫌で日本に来た」
とのことだった。
98年に中国の北京へ行くと外国人には法外な税金が課され、国営企業は現場には顔も見せない共産党員幹部が経営しており、非常に仕事がやりにくかった。
最近仕事で一緒になる若い中国人は、中国国家の統制や監視に対して
「国が守ってくれるのがなぜ悪いことなのか分からない」
という。
最初は日本の若手同様に中国人も自分の考え方や意見の表明には無関心になったのかと思った。
しかし最近アフターデジタル、アフターデジタル2などの情報からは、ことITに関しては共産党員幹部が仕切って現場と遊離しているという状況は大きく変わっている。
さらにアリババのフーマーの様子を見ると中国の監視社会は当事者の中国人からは「中流層以上で犯罪の可能性?がない人を選別しているので、生活の安全、安心が保証されている社会になった」と好意的に捉えられているようだ。
日本人の子どもは「嘘は言ってはいけない」と育てられるが中国人のこどもは「騙されないように気をつけなさい」と教えられるという例えがある通り、独裁・統制国家は不正・腐敗が付いて回る歴史がありましたが、現在の中国は初めて独裁国家でありながら「騙される」不安が低い国になったのではと感じます。
人はマズローやハーズバーグがいうよう安全・安心などの低次の欲求が達成されれば、自己実現のような高次の目的にまい進できます。また低次の欲求を保証してくれる国に対して必然的に忠誠心が湧いてきます。
さてこれまでいくつかの危機があり、現在でも我々民主主義の国からは中国の体制には疑問が投げかけられています。中国はITによる監視体制をイデオロギーの制限付きですが安心・安全を国民に与え、中流層以上ではありますが、若手も含めて国への忠誠心を持たせることに成功しています。
世界にはこうした独裁体制を維持したい国家が数多く残っています。中国のITでの監視体制はこうした国家と相性が良いと言えると思われます。チャイナマネーだけで一帯一路を構築しようとしていると考えていると大きな間違いを犯しそうです。